「こころの処方箋」 河合隼雄・著 新潮社
「食農教育」2002年 7月号 掲載
何十年も生きてると、
どうにもならない悩みや心配事、
心の傷の一つや二つは持っていて当然。
ためいきつきつつ、とりあえず笑顔をつくろい、
なんとか生活しているヒトが大多数なのでは?
傷つき悩める心にすぐ効く薬は、
そう簡単にはみつからない。
即効力のありそうな「癒し」がブームだけど、
一時しのぎのものは、
しばらくたつとすぐ効き目も消えてしまう。
『こころの処方箋』は、読むだけで、
じんわりと確実に効いてくる。
「人の心などわかるはずがない」
「100%正しい忠告はまず役に立たない」
「ものごとは努力によって解決しない」
「心の支えがたましいの重荷になる」
……といった項目が55章。
わかりやすくて具体的なお話しから、
ヒトのこころのありようが見えてくるようだ。
どうして、うまくいかないんだろう、
なぜあのヒトと、うまくやっていけないのだろう?私はどうすればいいのだろう……
もう、どうしたらいいのかわからない……
日頃、漠然と感じてるモヤモヤの、
「モヤ」そのものを、
ちょっと視点をずらして見ることによって、
本質がはっきり見えてくることがある。
そのずらしかたのヒントがここにある。
新しい視点があることに、気づかされる。
まじめに一生懸命生きてるのに、
どうもうまくいかない。
そんな頑張っちゃってるヒトにこそ、
この本をすすめたい。
「正しさ」の固定観念にとらわれてしまった
心の「肩こり」を、河合さんの言葉が、
ゆっくりとほぐしてくれる。ヒトの心など、本当にはわかりっこないのだ。
そのことを芯から実感してる「臨床心理学者」だからこそ、
河合さんの言葉には説得力がある。
ウソのようなお話しでも、
そこに潜む寓意に真実が隠されている。
読んでるだけで、心の奥底にたまっていた悩みごとを、
じっくり聞いてもらった後のような、
ほっとしたような気持ちになってくる。なにもかもうまくいっているヒトなど、
いないのだろう。
ただ、うまくいかないときにこそ、
次へとつながり広がっていけるチャンスの芽が
潜んでいるのかもしれない。
そのことに気がついて、
自分自身の力でその「芽」をゆっくりと
育てていければいいのだろう。
たましいを育てていければいいのだろう。親と子、友だち、夫婦、教師と生徒…上司と部下、嫁と姑……
あらゆる人間関係に悩みながら、
そしてそれらを心から楽しみながら、
生きていくために。