スロー・イズ・ビューティフル 辻信一・著  平凡社     
「母の友」2002年2月号掲載

 

何もしてないと、後ろめたいのはなぜだろう。
ヒマだとなんだか落ち着かない。
目的をもって、それに向かって懸命に走ることが「良いこと」。
がんばる人が勝ち残る。

なんか疲れるな。
何かにいつも追われているみたいだ。
ムリして働きたくないな。
毎日の〜んびりナマケモノになって生きたいな〜。

なんてため息ついていたら、
この本のタイトルが目をひいた。

スロー・イズ・ビューティフル。
ゆっくりがうつくしい!

著者は文化人類学者で環境活動もされている人。
でも、決して声高に理念を振りかざさない。
「ナマケモノ倶楽部」を設立し世話人を務め、
スローなリズムで活動する仲間たちと、じっくり語り合う。
そんな人々の言葉や行動の記録が、
たくさん紹介されていて、思わずうれしくなる。

ちゃんといるんだ。
どんどん加速していく社会の中で、
「もっとスローダウンしようよ」と、
言葉だけじゃなく、実践している人たちが。

前ばかりを向いて発展し、成長を信じてきた結果、
私たちは何を失ってきてしまったのだろう。
機械化して便利になって節約されてきたはずの「時間」は、
いったいどこにいっちゃったんだろう?

愛すること、友だちをつくること、子どもを育てること……
それらはみな、時間がかかること。
手間やヒマのかかること。

ゆっくり育てよう。
ゆっくり生きよう。

あまりに巨大化した私たち人間社会の、
その止まらない「巨大化」の速度を、
少しでも落とすことができたら。

それには、機械に依存してしまっている、
そのつながれてるプラグをぬくこと。
ガーデニングや日曜大工をはじめたり、散歩を楽しんだり。
まず楽しむことを、著者は提案する。
みんなが、生きる速度を少しずつ落とせば、
オゾン層にあいた穴の広がる速度が、
ちょっとは遅くなるかも。
速く走れない人たちも住みやすい社会になるかも。

たくさんのヒントと希望が、この本の中にある。

じっくり読みたい。
そして、まず身近なところから、できることから……。

とりあえずヒマをのんびりと楽しむことから、はじめようかな。

 

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