読書からはじまる    長田弘・著 NHK出版
「母の友」2001年12月号掲載

 

本屋をうろつくのがスキだ。
棚の間をさまよって、あふれる色や言葉を眺めていると、
本たちが私に語りかけてくる。
ときおりヘンテコな本と目があってしまい、
くすっと笑ってしまったり。  

うろうろしてると、
急に本棚の方から声をかけてくる本がある。
「やあ、待ってたよ! 」
足を止めて、その一冊を棚から引き出す。
「いっしょにつれてってよ」
とそいつは言う。
「いやあ今はちょっと……」
と棚にすぐ戻してしまうことも。
「ああっ! 探してたんだよ〜」
と恋人と出会ったみたいにウキウキと、
レジに直行しちゃうことも多い。  

「やあ、来ましたね」と、
この『読書からはじまる』は
棚から穏やかな笑顔で語りかけてきた。  

長田弘さん。
詩人。
代表的な(私の持ってる)詩集に
『食卓一期一会』『深呼吸の必要』(晶文社)がある。
長新太さんとの『ねこに未来はない』(晶文社)
という絵本もお気に入りの一冊だ。  

その長田さんの、「読書」をめぐる本。
これは私のうちにぜひ!来ていただくしかない!  

「本はもう一人の友人です。」
「人は読書する生き物です。」
……彼の言葉は、ゆっくりと静かだ。
本について、言葉について、
充分に考えつくされたうえでの言葉が、
この本には、ぎっしり詰まっている。  

あまりに身近にありすぎて、
日頃考えることもなかった「言葉」の不思議。
なぜかしら惹かれてやまない「本」の魅力。
その根底に流れる静かな水のような力の秘密を、
穏やかで情熱を秘めた口調で、私たちに語りかける。  

「すべて読書からはじまる。
 本を読むことが読書なのではありません。
 自分の心のなかに失いたくない言葉の
 蓄え場所をつくりだすのが、
 読書です。」  

失いつつあるものは何なのか。
私たち自身をゆたかにする「言葉」とはどんなものなのか。  

次から次へと溢れてくる情報の波に、
流されることにも慣れてきてしまっている私たち現代人。
うすっぺらに輪切りにされてしまっている存在感。  

そんな自分自身をしっかりと取り戻すためにも、
彼の「言葉」を、心を澄まして聴き取りたい。

手遅れにならないうちに……。

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